los episodios de suyos
『ていうか、きちんと鍵をかけてれば、こんなことにはならなかったんじゃない?』



 まるで、“点検不足”が前提のような話し振りだった。団員の中の一人がためらいもなくそう言ったので、私はとても驚いた。何年も一緒にやってきたのにどうして……と。



『ちょっと、やめなさいよ!まだそうと決まった訳じゃないのに……』

『そうだよ!警察に調べてもらうまでは何とも言えないだろ?』



 援護してくれる者も居た。だが、私のミスだと主張する人物はいっこうに譲らない。



『そんなこと言ったって、盗みに入られた事実は変わらないじゃない。
大体、ソニアが鍵をかけた後に誰かがここを開けて、またわざわざ鍵を元の場所に戻したっていうの?そんな面倒なこと、誰がするっていうのよ。ソニアが不注意だったに決まってるわ。』



 何を根拠に断言するのだろう。そう思ったけど、“私が絶対に鍵をかけた”ということを証明できる人が自分以外に居ないのだから、その考えは確かに間違ってはいない。そう思うと同時に、私は大きく落胆した。

 ――信用というものは、こんなに簡単に崩れてしまうものなのだ。そして私は、そこまで仲間意識を持たれていた訳ではなかったのだ、と。
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