los episodios de suyos
 新しい職場は、とても自分に合っていた。考え方や仲間との連携、上司との関わり方も、理想としていたもの以上だった。

 勿論、命を危険にさらしているという怖さは常に付きまとう。でも、それをいつしか“誇り”だとも思えるようになった。国のため、民のため、そして大切な人のために、己の全てをかけて戦う。私がこんなに充実感を得られる仕事は、他にはないだろう。



『みんな、毎日よくやってくれているな。新しいメンバーも成長が早い者ばかりだし、特にソニアとグレイは、もう実戦で大分慣れただろう?どれ、試しに主要メンバーに入れてみるか。』



 月に一度開かれる集会でボスがおっしゃった時は、グレイと一緒に大喜びしたものだった。良い年をした大人でもはしゃぐものなのだと、頭の何処かでは冷静に考えていたような気もするけれど。とにかく、ボスと仲間達に信頼されることが、何よりも嬉しかった。

 ――あれから月日は流れて、ローサでは新しいボスが活躍するようになった。あの幼さが残る表情は何処かに消え、すっかり大人びたという印象だ。もう“お嬢”と呼べないのは、寂しいような気もする。でも、それを感じる暇がないくらい、毎日が楽しいのだ。



『ねぇ、ソニア。今日はアタシ達暇同士だし、街まで行かない?』

『あら、ボスのおごり?それなら大歓迎よ!』

『……本当に年上なのかしらね。まぁ、良いけれど。』



 微笑したボスは、いつものグレーのスーツではなかった。白のキャミソールの上に薄手のミントグリーンのニットを羽織り、膝上丈の黒いアコーディオンスカートを穿いている。夏も佳境に入ろうとしている頃なので、涼しげで清楚な雰囲気の彼女の隣を歩いていたら、何人もの男達が振り返っているのが分かった。
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