los episodios de suyos
 イリスは本当に可愛くて、部下達がアタシに『ボスはシスコンだな!』と言った程甘やかしていた。兄弟姉妹が居ないアタシには、イリスは“本当の妹”だったのだ。アタシの両親が『イリスを養子にしても良いな』と言っていたくらいに。

 アタシを慕っていたイリス。いつも笑顔を絶やさなかったイリス。怒ったフリをしたら本気で泣き出して謝ってきたイリス。寝惚けながら抱きついてきたイリス……分かっていたけど、あの子はアタシの中でこんなに大きな存在になっていた。忘れようにも、忘れられない。いつだったか、イリスがアタシに告げた言葉を思い出す。



『未来は全然マフィアらしくないわね!優しいし面白いし……何より、道に倒れてた汚い私を拾ってくれたもの!!』



 ――違うよ。アンタは汚くなんかない。誰よりも綺麗で透き通ってるじゃない。

 目の前で血を流している、変わり果てた可愛い姿に漸く視線を向けることが出来た。嫌なのよ、アタシは。アンタが居なくなるなんて受け入れたくないの。

 だけど……これが現実で。目の前に居る殺人犯とアタシもある意味同類で。それでもアタシを“天使”だと言ったイリスを思うと、感情が抑えられなかった。
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