los episodios de suyos
「群……アタシ、ボス失格よね。感情出しすぎ。婚約者の前ならまだしも、部下や敵の前で泣いたり怒ったりなんて自分に呆れるわ。」

「馬鹿、あれがボスに失望した部下達がする顔か?テメェの目こじ開けてちゃんと見やがれ。」



 構えたままの銃を片手に、背後の部下達を振り返る。アタシに注がれている視線はどれも優しくて、不覚にも“別の涙”まで流れてきてしまった。



「お前は仲間思いの良いボスじゃねぇか。俺は自分の部下からこんなに慕われてねぇ。」



 皮肉の籠った口調で自らの部下達をニヤリとした目で見つめる群。部下達が何を言われたのか分からないのを知っている彼は、同じ調子のイタリア語で後半の台詞を繰り返す。彼らは恐れおののいて『すっ、すみませんでしたボスゥ!!』と叫んだ。



「……ま、こいつらはどうでも良い。あいつ、どうするんだ?」



 群の視線を辿れば、愛する妹を殺した憎らしい男。憤りが消えた訳では決してなかった。でも、アタシの中の炎は赤から青に色を変えて、やがてスッと消える。銃を下ろしたアタシが最後に告げたスペイン語で、奴は去ったのだった。



『……アンタは死んで終わるより、生きて苦しみなさい。』
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