人事部の女神さまの憂い

その帰り道――――。

いつものように家まで送ると言ってくれた藤木さんと歩きながら、さっきの香織さんと立花さんの話を思い出していた。

「好きな人とするのと、そうでないのとって、やっぱり違うんですか?」

「どうかなー。俺の場合あいつと違って、その瞬間好きだと思う子しか口説かないからね」

「瞬間って・・・。藤木さんに聞いたのが間違いでした」

がっくりしながら、トボトボと歩いていると急に藤木さんが立ち止まった。

「でもさ、大事にしたいなって気持ちはわかるよ。だから、手出せないっていうのも」

不思議に思って立ち止まって振り返ると、そこにはいつものふざけた感じじゃない、真剣な眼差しをした藤木さんの顔があった。


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