人事部の女神さまの憂い
「藤木さん・・・・?」
呼びかけても、その眼差しがはずされることはなく、しばらく見つめ合ったままだった。
気まずさを感じて視線を外すと、ようやくいつもの藤木さんが戻ってきた。
「悪い、悪い。なんか俺も年くっちゃったかなー。あいつら見てても、暑苦しいなーくらいにしか思ったことなかったけど、ああいう関係もいいなってちょっとうらやましくなっちゃったよ」
そう言って苦笑いをしている。
「藤木さんでも、そんなこと思っちゃうなんて、年を重ねるってすごいことですね」
ちょっとからかうように言うと
「そうそう。でも逆に、年取っちゃうといろんなものに縛られて動けないってのも確かだよ。だからさ、ニシユリはそうなる前に、素直に欲しいものは欲しいって言ってみるのもいいんじゃない?」
そういって、わしゃわしゃと私の頭をかきまわした。