人事部の女神さまの憂い
シャワーを最短で浴びて戻ると、コーヒーを手渡してくれた柏木さん。
「それ飲んだら送ってくよ。俺、今日現場いかないといけないから、会社までは送ってってあげれないんだけど」
そう言いながらも、目線はタブレットに集中している。
すっかり仕事モードの柏木さんも素敵なんだけど、昨夜の甘い雰囲気なんて一切ない、この空間にいたたまれずに
「ありがとうございます」
としか言葉にできなかった。
そして家まで送り届けてもらった時に
「またね。仕事、がんばって」
私の頭をなでながら一瞬見せてくれた甘い笑顔にキュンとしながらも、やはり物足りなさを感じていた。だけど、そんなこと言葉にできずに
「ありがとうございます。柏木さんもお仕事がんばってください」
精一杯笑みをつくって、そう口にすることしかできなかった。