人事部の女神さまの憂い

「ゆりちゃん家送ってから、そのまま待っとくから、会社まで乗ってきなよ」

車を走らせながら言ってくれる柏木さんに

「今日はセミナーなので、会場直行なんです」

せっかくの優しさに甘えられないことを残念に思いながら告げた。残念な気持ちが顔に出ていたようで

「ほんと、かわいいねぇ」

頭をぽんぽんとしてくれる。

その仕草にキュンとして、思わず柏木さんの唇に唇を重ねた。

「余計に腫れるよ」

笑いながらも受け入れ、軽いキスを何度か降らせてくれる。

その柏木さんの表情がとっても優しくて、幸せな気持ちが溢れてきた。

ただ、その余韻に浸る間もなくマンションの前に着いてしまい

「仕事がんばってね」

いつかと同じセリフを言う柏木さんに淋しさを感じながら、別れた。


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