人事部の女神さまの憂い

部屋の窓から、こうやって雪を見るのも久しぶりだなと外を眺めていると

「何しんみりしてんの?」

缶ビールを両手に持った巧が部屋に入ってきた。

ビールを受け取って

「就職おめでと」と乾杯をして口に運ぶと、その冷たさでブルっと身体が震える。

それを見て笑ってる巧に

「すんなり決めてよかったの?」と聞くと

「当たり前じゃん。あの事務所入りたいってやつ、どんだけいるか知ってる?バイトでも、みんな入れるわけじゃないし。ほんとラッキーだよ。まぁ、俺の場合は実力だけどな」

自慢気に言っている様子がかわいい。こんだけ喜んでるならよかった、と思いながら柏木さんってやっぱりすごい人なんだな、って改めて実感する。

そして、やっぱり遠い人だ。


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