人事部の女神さまの憂い
「ほれ、香織の好きそうなワイン持ってきてやったぞ」
無造作にワイン1本を手に持っている姿も絵になるなーとドキっとするのは、自分の気持ちに気付いたせいなのか。
「ありがとー!ふじっきーがワインなんて、珍しいね。でも今日はワインに合いそうなのが多いから、みんなでワインにしよう」
いつもは最初にビールを飲んでから、私たちはたいてい焼酎を飲んでるんだけど、たしかに今日のメニューはワインって感じだ。キッチンにいってワインオープナーとワイングラス4つを手に戻ると、香織さんは藤木さんにも招待状を渡して、さっきと同じような説明をしていた。
「遠い。泊まりかー。めんどくせーな」
暴君は暴君らしく、お祝いの言葉もなしに暴言を吐いていらっしゃる。
「でも飲んだ後に帰るのめんどうでしょ?泊まりヤダったらホテルキャンセルするから言ってね」
香織さんは怒りもせず大人な対応をしている。
「ま、たしかに。あそこだったら車で行きたいしな・・・」
そこまで言って藤木さんは何かをちょっと考えるようにして
「ニシユリ、のっけてってやろうか?」と言ってくれた。