人事部の女神さまの憂い
「なんか、すみません。ご飯も結局ごちそうになったのに」
「別に。無理に誘ったの戸田だし」
ハンドルをきりながら話す柏木さんは、いかにも「大人の男」という感じで目が離せなかった。
なんだこの状況と思いつつ、特に会話もないままでも心地いい空気感の中、ぼーっと柏木さんの横顔を眺めていた。
家までは、ほんの15分ほど。
もうちょっと、このままで居たかったなと思ったけど
「ありがとうございました」
お礼を言って降りようとしたところで
肩を掴まれて、いきなりキスをされた。
一連の動作が流れ作業のようで、避ける間もなかった。