好きにならずにいられない

お店に着くともう岡田さんは来ていた。

「お疲れさまです
早いですね
私と飲むのを楽しみにしてたのですか?」

なんて冗談ぽく言うと

「そうそう
本当に楽しみで早く来たんだ」

なんてニヤニヤしながら言ってくる。

「私も楽しみでお気に入りの服で来ましたよ」

と笑顔で言ってみた。

それから岡田さんは色々な話をしてくれた。

それが楽しくて飲んで食べてまた酔いそうになってきていた。

すると岡田さんが

「今日は飲み過ぎるなよ」

「そう言えば前に飲んだ時の酔いつぶれた私はどんな感じでした?」

「面白かったよ
マジマジ顔を見てモテるのがわかるとか生理的に好きじゃないとか散々な事を言って」

「なんだかすみません」

「で、帰りにタクシー拾って座ったらスーと寝てしまって話しかけても大丈夫の一点張り。

俺の部屋に着いたら急に服を脱ぎ出して下着姿になったらTシャツがないと叫びだしTシャツ渡したらお休みなさいって言って床に寝た。

で、俺がベットに運んで朝を迎えたってわけ。
下着姿はそそられたけど何もなかったぞ」

「自分の事ながら残念で恥ずかしいです
今日はがんばりますので」

と言いつつ飲んで酔ってしまうのが私で

「ふふふ」

と笑いだし

「あっ酔っただろ」

「まだ大丈夫です
だってまだふたりで飲みたいですし」

「そんな事を言われると家に連れて帰るぞ」

「行きたいかも
でも遊ばれて捨てられるのはイヤだから我慢します」

「いやいや我慢するのは俺だし
結構お前の事、気になってるからな」

と笑いながら話してる。

「えーそんな事言いつつまた色んな女の人と遊んでるんですよね?

もう修羅場見せないで下さいね」

と笑いながら言うと

「まぁ俺の事は信用できないよな、あんな所を2回も見たしな

今までは遊んでばっかりだったけど
最近はちゃんした恋愛をしたいとも思うようになったんだよ

これも舞のお陰なんだ」

急な呼び捨てに動揺しつつも

「私ですか?
何かしましたっけ?」

「覚えてないと思うけど

仕事で色々あって凹んで休憩室に居た時にお前が来てお疲れさまですって言って温かいココアくれたんだよ

営業って大変そうですよね
その上いつも笑顔で人に優しい岡田さんて神ですよ
神様もひと休みしてくださいね
ココアどうぞ
甘いの苦手でしたら匂いを嗅ぐだけでもホッと出来ると思うのでって笑顔で言ってくれたんだ

今まで女は飾りとか後腐れない関係だけを求めてたけどその時の天使のような笑顔と気遣いにこういうのもいいなって思ったわけよ

俺にそんな風に思わせたのにお前は俺に会っても全然覚えてないみたいだし
こんな感じで会ったり連絡したりするようになってどんどんハマってる」

そんな予想外な話にドキドキしてしまう。
嬉しいのと恥ずかしいので話をはぐらかそうと

「岡田さんは爽やか王子を演じるのは疲れないですか?」

「別に無理に作ってるわけではないから疲れない
仕事を笑顔でやってるとそこそこ上手くいくし女にキャアキャア言われるのは好きだしそれで色んな事が円滑に進むなら爽やか王子を演じるのも仕事だと思ってるから

爽やか王子は嫌いか?」

「嫌いではないですけど
王子ではない岡田さんの方が好きですね」

「じゃあお前だけには仕事中も俺でいてやる」

「でも王子な岡田さんも見たいしやっぱり仕事の時は王子でプライベートで岡田さんでお願いいたします」

また酔い始めて素直な気持ちを伝えてしまった。

岡田さんもそれに気付いたらしく

「お前酔ってきてるだろ?
酔って記憶をなくす前ぐらいから素直になるから」

「失礼な
私はまだ酔ってないです
まだまだいけます」

「もう帰ろうか」

「イヤです
もっと一緒にいたいです」

「じゃあ俺の家でゆっくり飲もう
そこなら酔いつぶれても問題ないからな」

「はい喜んで」

「居酒屋かよ」

岡田さんがまた大笑いしていた。

素直になっている私はまだふたりで居られる事が嬉しくて笑顔でお店を出た。
< 10 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop