好きにならずにいられない
「大丈夫です」
と何事もなかったように対応し爽やか王子との初めての会話は終わった。
そんな修羅場を見てから1週間が経とうとしていた。
今日は金曜日。
友達と飲む約束してる。
何だかすごぉく飲みたい気分になっていたからちょうど良い。
約束していた居酒屋に入りカウンターの横を抜け友達が待ってる個室に行こうとすると…
「だから好きにならねーって言っただろ?」
「何様なの、あんたは」
という怒鳴り声と共に個室から飛び出してきた女がぶつかってきて持っていたビニール傘が壊れた。
怒っていて女は傘を壊した事に気付かず行ってしまった。
最近、こんなことばかりだと思っていると
「すみません、ご迷惑おかけして」
と男が出てきた。
見るとまた爽やか王子だ。
さすがに爽やか王子も驚いたように動きが止まっている。
同じ女に修羅場を2度も見られたのだから。
「またすみません
なんか恥ずかしい所ばかりお見せして」
と一瞬にして会社で見せる爽やか王子になっていた。
私も
「気にしないで下さい。
こういう経験も滅多に出来ないので」
と私の方は動揺を隠せず変なことを言ってしまった。
「面白いなお前」
と王子らしくないニヤリとした笑ったがまたすぐに王子に変わり
「傘は弁償します。
良かったら一緒に飲みませんか?」
「大丈夫です。
傘はビニール傘ですし友人と飲む予定ですし」
「いえいえ。
それでは気が済みません
何かさせてください」
「では傘は500円なので500円ください。
それでいいです。」
「それだけでは気が済みません」
「いえいえ本当に気にしないで下さい」
「いやいや…」
そんなやり取りを何度か繰り返し埒があかない。
私は少し短気なところもありイライラもピークに
「では傘代500円とあなたが気が済む金額を下さい!それでこの話は終わりです」
すると王子はフッと笑い私に1万円を渡してきた。
少し多いと思ったがもう関わりたくないと思いそのお金をもらいその場を去った。