好きにならずにいられない
そんな事があった週末が終わりまたいつもの毎日が始まろうとしていた。
いつも通り王子の黄色い歓声を聞き呑気にしていたら
「おはよう、今井さん」
聞き慣れない声が聞こえた。
声のする方を向くと王子が笑顔で私を見ている。
突然の王子の登場に総務部がざわめく中、
王子は特に気にする素振りもなく
「交通費と出張費の事で聞きたいことがあるんだけど今日の定時ぐらいに来てもいいかな?」
と話しかけてきた。
予想外の出来事に動揺しつつも
「定時過ぎると私は居ないかも知れないですが私がいなくても経理関係の事をわかる人は誰か居ると思いますので何時でも来て頂いて大丈夫ですよ。」
とマニュアル的に話し
「わかりました。ではまた来ます」
と王子もマニュアル的な返答をし帰っていった。
今までそのような事で総務などに来たことない王子が来たということは私と話したいと言うことなのだろう。
関わりたくないが1度ちゃんと話し合ってまた王子と関わらない生活に戻ろうと考えて重い気持ちのまま定時を待った。
定時になると総務部はほとんどの人がいなくなる。
はずなのに今日は
「これから王子が来るのよね。
一目、王子を見てから帰ろう」
と言う人が多くまだまだ人がいる。
いっそ帰ったしまおうかと思うがそれでは何も変わらない。
気が重いがそのまま待つことにした。
定時少し前に王子が無駄に笑顔を振り撒いてやってきた。
私だけに聞こえるように
「逃げなかったんだな」
と。
「そちらが話したい事があるようなので話を聞いてこれで本当に関わりを無くそうと思ってます」
と本心を伝えた。
交通費や出張費など王子も知っていそうな
事を今更ながらに説明していると王子を見たいと残っていたギャラリーも居なくなり2人きりに。
「そろそろ本題に入りませんか?」
と私が伝えると
「まず確認だけど俺のストーカーじゃないよな?
あんな場所に2度も居合わせるなんて偶然にしては変だろ?」
「どこまで自信過剰なんですか?
私はあなたには全く興味がありませんから」
「だよな。」
と笑いながら王子が言う。
「簡単に言えばこの前みたことは内緒にしてほしいから口止め料をはらいたいと思って」
「この前お金を頂いているのでもう口止め料はもらいましたからその事は大丈夫です」
「いやいやあれだけで済むほどの事じゃないんだよな、俺にとっては」
「私にとってはあれ程度の事ですよ。
なので私に関わらないで頂ければ大丈夫です」
「俺はそんなに嫌われてるのかな」
「好きとか嫌いとかそんなレベルでもないです。
ただあなたの私生活に興味ないですし私も面倒なことに関わりたくないと言うのが本音なので」
「こんなに女性に興味を持たれないのも寂しいな。
興味を持ってもらうまで頑張ってみようかなぁ
ねっ舞ちゃん」
「私は秀一と付き合ってますし間に合ってますから。
なので本当にもう気にしないで下さい
失礼します」
と帰ろうとすると
「じゃあ最後にゴハン行こうよ。
俺が残業させちゃったし。
これくらいは良いだろ?」
と王子ではない素の岡田裕貴が私を誘った。