くれなゐ症候群
「修ちゃん、口から血が・・・」


奈緒の言葉に、修二が手の甲で口をぬぐう。

「転んだときに切れただけ。たいしたことないよ」


唇から、まあたらしい紅い血がじんわりとにじんでゆく。


すべてが灰色をかぶせられたような世界のなかで、それはあまりに鮮やかだった。


知らず、手をのばす。

顔が近づく。

奈緒からか、修二からか、あるいは二人ともが顔を寄せているのか。
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