くれなゐ症候群
第一章



朝起きて、顔を洗う。

台所に向かい、ガスレンジにやかんをかけて、お湯をわかす。

トースターにパンをセットする。

ふすまをへだてただけの隣の和室から、母親が咳きこむ苦しげな音がくぐもって、聞こえてきた。

かすかな衣ずれに、身体を起こそうとする気配を感じとる。


「お母さん、いいよ、寝てて」
ふすまごしに声をかける。


それでもじきに、そろりとふすまが開き、母親が青白い顔をのぞかせる。
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