くれなゐ症候群
幼いころから、奈緒は小さな動物が、ことに猫が好きだった。

喘息を患う母がいるから、ペットを飼うのは無理だけれど。

小学生のときは、希望してうさぎやニワトリの飼育係をやっていた。

町のどこかで野良猫が子どもを生んだときけば、探して足をはこんだ。

こっそり給食の残りを持ち帰っては、猫たちにあげたりしていた。
懐いてくれると、心底嬉しかった。


小さくて頼りなくて、懸命に生きている存在は、無条件に愛おしい。
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