僕らの空は群青色
しかし、いざ渡を誘ってみると、あの薄情者は「お盆は稼ぎ時だから無理」とあっさり計画を却下した。「どうにかならないか」と言うと「どうにもする気がない」と取り付く島もない。

確かに前言われたっけ。「友達の実家とかさ、どういう顔していけばいいわけ?」なんて。

まあ、今回はいい。秋のしし座流星群のときは、もう一度説得してみよう。
今度は稼ぎ時だなんて言い訳はさせないぞ。


結局、ひとりの帰省となったけれど、久しぶりの故郷の空気はそれだけで懐かしく胸に染み入るものだった。
最寄り駅に着くと母と祖母が迎えにきていて、二人とも戦地から息子が帰ってきたとでもいうようなはしゃぎようだった。
父も表情こそ変わらなかったが明らかに嬉しそうで、僕に晩酌を付き合わせながら学校のことをぽつぽつ尋ねる。父とそうして二人で話をするのはこの時が初めてだったかもしれない。

僕は家族と久方振りの団欒を味わい、帰省前に考えていたつまらなさを図らずも忘れた。

そしてあらためて思った。
渡にこの団欒は毒々しかったかもしれない。呼ばなくて正解だった。渡を傷つけずに済んだ。


僕はそうして一週間ほど北陸の夏を謳歌し、その足でサークルの長野合宿に参加した。
サークルの合宿といっても何しろ遊びサークルなので長野のキャンプ場でカレーを作ったりテニスをしたくらいの合宿だ。

サークルは一・二年が主体だった。僕の通っていた大学は三年生でゼミナールに所属するようになると、サークルだなんだという暇がなくなるのだ。

年齢の近い者同士のキャンプはとても気楽だ。僕は夏の前半中、渡と駆けずり回っていたので、他の友人と遊ぶのは新鮮で楽しかった。渡とは味わえない仲間の娯楽を満喫した。
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