僕らの空は群青色
僕はよく考えもせず頷いた。アルバイト等の所用のない僕はいつだって時間をあけられた。
海には行かないうちに九月になってしまった。
渡と行ってみるのもいいかもしれない。クラゲはたくさん出ているだろうけれど。

渡ががばりと身体を起こして言う。

「計算したところな、片道三時間半で海まで行ける」

「はぁ?おまえどこの海に行く気だよ」

海ならこの街から電車で四十~五十分だ。湘南だって二時間あれば着く。

「自転車を使えばそのくらいはかかるだろ」

渡はこともなげに答えた。
僕は頭を抱える。

「正気で言ってる?」

「なに、その言い方」

「自転車で海までって?この熱いのに?海に入ってクタクタになって、また自転車漕いで帰ってくんのかよ。っていうか、僕もおまえも自転車持ってないだろ?」

矢継ぎ早に言うと、渡は僕を小馬鹿にしたような目で見る。

「これだから、箱入り息子は」

とてつもなく馬鹿にされた気分だ。軟弱者と罵られて我慢できない。

「じゃあさ、試しに渡のたてたプランを教えてよ」

「駅前でレンタサイクルを借りるんだ。朝七時にここをでる。実はこの前思い立って地図を買ってみたんだけど、ほら。このルートなら昼前には海に着くぞ」

長座布団に寝ころんだまま手を伸ばし、鞄を引っ張ってくると、渡はがさがさと地図を取り出す。
見れば、順路のマーカーが引いてある。なんだよ、やる気満々じゃないかよ。
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