僕らの空は群青色
「秋のことなんかわかんねえし」

馬鹿にしたようにひっそり笑うけれど、それは僕ではなく自分に対してバカバカしいと思っているみたいに聞こえた。

「えー、その頃、渡はどこかに引っ越す予定?」

「違うけど」

「それなら、いいじゃん。約束はタダだよ」

すると、その時、僕の耳に不思議な声が聞こえた。

―――――そうだよ。ね、行こう?

その声は軽やかな女の子の声だった。
渡の向こうから聞こえたように思う。

僕は渡の隣に人影を探したが誰もいない。
今のは一体。
空耳にしては、はっきりと聞こえた。

「渡、今、何か聞こえなかった?」

「は?」

「女の子の声みたいな……」

「星の次は怪談やりたいのかよ。おまえ、本当に意味不明」

「いや、そうじゃなくてさ」

渡には聞こえなかったみたいだ。なんだろうと思った。
幽霊なんか信じる柄じゃなかった僕は、聞こえてきた声を気のせいだと思うことにした。何かの聞き間違いだろう。
しかし、鈴を振るような声は、いつまでも僕の鼓膜を震わせていた。



僕と渡が少々の友情を育みだしたのは、こういう経緯。




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