僕らの空は群青色
諍い
知り合って、ひと月半。相変わらず僕と渡は週に一・二回、本を貸し借りする仲だ。
図書館で顔を合わせれば、片手をあげて、同じテーブルにつく程度の。
僕の好む、いわゆる文学トークも渋々ながら応じてくれることもあり、互いに一人暮らしなので、渡は僕の部屋に遊びにくるようにもなっていた。
大学の友人と遊ぶより、渡といる方がラクだった。
渡は口数が少なく、いつも猫背で、僕ともろくに目を合わせない。目立つ薄茶の髪も色味の薄い虹彩も天然だそうで、本人は目立たないように黒くしたいと言っていた。
ひたすら地味に影の人生を望む渡は、若い僕にはちょっと格好良く見えた。
本当にちょっとだけ。
ほとんどは『もう少し、愛想よくしろよ』とか『斜に構えてんじゃないよ、中二病か』とか思っていたんだけどね。実際、口にも出していたし。
渡は『格好なんかつけてないし、俺はこれでいい』なんて、不貞腐れていたっけ。