僕らの空は群青色
見舞い
コーヒーを飲んだ雨の夜以来、僕と渡の交友は元に戻った。
むしろ前より少しだけ、距離が近付いたかもしれない。
渡は相変わらずうちにやってきては本ばかり読んでいたし、僕はテスト期間が始まり、渡が来ても勉強ばかりしていた。
マイペースで過ごす空間は居心地よく、僕は渡が以前よりリラックスして過ごしていることを感じていた。
とはいえ、結局のところ渡のことはほとんど知らないままだった。
病院に義理の姉がいること、彼を「人殺し」と罵った男のこと。彼が複雑な何かに絡めとられているのは察せられたけれど、それ以上追求はできなかった。病院でつけてしまった件もあるし、渡が話す気がない以上、僕は聞かないほうがいいのかもしれない。
この頃、僕は初めて渡の家に行った。
木造のおんぼろアパートで駅から20分も歩かなければならない。利点があるとすれば、近くに美味い定食屋とラーメン屋があるくらい。これらを利用するため、渡の家にはよく行った。定食屋で夕飯を済ませた後は、たいてい何にもない渡の部屋でだらだらと喋ったり本を読んだりして帰った。
外に出ることも増え、僕たちは映画を見たりビリヤードをしたり、二人の手持ちの額に相応しい遊びを楽しんだ。
田舎産まれの僕に、街は大遊技場だった。
なんでもあったし、見るものすべてが新しく楽しく思えた。
渡は東京の生まれだったけれど、僕と一緒になってひとつひとつの経験を楽しんだ。どちらかといえば、渡の方が世間やそこでの遊び方を知らなかったかもしれない。彼は外見こそは当世風な若者スタイルで、様々な経験をすでに一通りさらったように見えた。しかし実際は、カラオケもボーリングも行ったことがなく、ビリヤードはキューの持ち方すら知らなかった。
僕たちは課題に挑むみたいに、少しずつ遊びをこなしていった。