僕らの空は群青色
「好きな勉強できるよ。渡なら文学部なんてどうだよ。今読んでる近代文学を専攻してさ」

「意味ない」

また、そういう影のある男アピール!僕は苛々と言う。

「じゃー、特に意味のない社会科見学的な感じでついてきたら?うちの学食、うまいよ。おごるよ」

「学食は興味ある」

よし、釣れた。だんだん渡の操縦法がわかってきた気がする。


翌日、僕は渡と通学用のバスに乗り、バスで15分の大学に到着した。
夕方からバイトだという渡のために一限の授業に合わせてやってきた。一般教養の英語の授業。これなら、学校の延長だし、まだマシかなと思ったのだ。そもそもテストが始まっているクラスも多く選べなかったのだけど。
小さい教室なので、大学らしい階段状の大講義室ではないのも残念だ。せっかくだから、それらしい雰囲気を出したかったのに。

「白井、おはよー」

「今日サークル出る?」

サークルが一緒の友人が声をかけてくると、渡の表情が緊張するのがわかった。人見知りだもんな、こいつ。僕は渡を背に庇うように立つと、答えた。

「おはよ。今日は用あるから駄目だ。先輩に言っといて」

「最近、付き合いわりーぞー」

「ごめんごめん。単位やばいからさ」

友人が行ってしまうと、僕は渡に振り向いた。

「付き合いの悪い白井くん……」

渡が皮肉げに顔を歪めて笑う。大方、『俺なんかと遊んでばっかりいるからだ』と卑屈に思っているんだろうな。

「まあ、渡と遊んだ方が楽しいしね」

僕の答えに渡がぶすっと眉間に皺を寄せる。
たぶん、照れている。突っ込めば怒るだろうから知らん顔しておくけれど。

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