僕らの空は群青色
一年ほど経った頃、誰も訪れない渡のもとに、啓治が面会に来た。

優しかった兄貴分は怒りと憎しみのこもった瞳をしていた。面会用の白い個室で向かい合った。啓治は言った。

『深空の呼吸器がとれた』

渡は一瞬何を言われているのかわからなかった。

『自発呼吸ができるまで回復している』

驚いた。
渡はその時初めて、深空が生きていることを知った。

『親はおまえに話さなかっただろう。おまえが深空に関わるのが嫌なんだ。俺も同感だ。だから敢えて言っておく。わかったな、もう深空には近づくな』

啓治はそれだけ言って去って行った。渡は面会室で一人泣いた。

深空は生きている。
深空はまだこの世界にいる。



「一年七ヶ月経って、俺は施設を出た。保護観察なんていう身分だったけど、親が俺と暮らしたがるわけもないから家を出た。仕送りが毎月来るから、有り難くもらってる。今年に入って深空に会いに行った。俺の半分血のつながった姉。深空はずっと眠ってる。あれから三年、ずっと。呼吸器がとれた時はみんな回復を信じたらしいけど、駄目だった。医者が言うには、深空はもう目覚めないらしい。眠ったまま、やがて死ぬらしい。一度会っておこうと思った」
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