僕らの空は群青色
「渡からあなたとの話を聞きました。どうか、目覚めてくれませんか?」

もし、僕が彼女の言葉を感じ取れる唯一の人間だったとしたら、僕の声かけは有効じゃないだろうか。

「僕はあなたに目覚めてほしい。……渡をラクにしてやってほしいから」

渡が自分の人生を人殺しだと思い続けるなら、それを解消してやるには、深空の回復しかない。
なんとも手前勝手な主張だけど、僕にその手伝いができるなら絶対に見逃したくない。

僕は、渡があんな暗闇を抱えてひっそり生きていくのは嫌だ。
渡は笑える。楽しいことを楽しめる。
ただ、すべてを罪のせいにして、深空に遠慮しているのだ。

渡は罪を犯したけれど、それはどうしようもない誤解があったのも一因だ。
きっと、深空が目覚めれば、その部分と、起こしてしまった事件についても語り合える。

渡は、深空に謝ることができるのだ。

「もちろん、僕もあなたと話がしてみたい。渡からたくさん話は聞いたけど、実際深空さんと話がしたいよ。どうか、目覚めてくれませんか」

眠る人に話しかけ続ける。本当に誰かがいたら恥ずかしくてできなかったと思う。

沈黙は当然ながら続き、僕はやはりだめかと息をついた。
そもそも、あの声だって随分聞いていない。聞かなくなってみれば、やはり僕自身の幻聴だった気もしてくる。

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