【完】クールな君に告白します
だから抱き合っていたなんて誤解だ、と告げたけど、椎名くんはそんなことはわかってる……と、早口で答えた。
「っ、なんでお前が、そこで泣く必要があるんだよ?」
「それは、えと……」
「そんなに、バスケ部で嫌なヤツでもいたのか?」
言葉に詰まれば間髪入れずに質問を投げ掛けるから、私はゆっくりと首を横に振って否定する。
梶先輩は嫌なヤツ、なんかではなくて、むしろ。
「……その逆なの。とても、本当に大切にしたかった人だから」
心底、そう思っていたあの頃が、今にも目を閉じれば浮かぶんだ……。
だから、素直な思いが口から零れおちた。
「……告白したい男ってそいつのことか」
と、独り言のように呟いた椎名くんの声が宙を舞う。