【完】クールな君に告白します



この場所から眺めていたのは、ここから一歩踏み出すことが出来なかったから。


本当は、梶先輩に会いに行こうとすれば、こんなに近い距離にいるんだからいつだって出来たことなのに。



「怖いよな。怖くて当たり前なんだ、」



力を抜いたように息を吐く気配がした。

そして、泡のように消え入りそうな声が降ってくる。

……と、同時に。

無意識に零れおちた私の涙を優しく拭ってくれる。



「伝えたいのに、拒絶されたらって考えたら怖くて言えない……そんなの当然、だよな」


「し、椎名くん………?」


「……傷つけた自分が、許せなくなるよな」



必然的に視線を向けた先の椎名くんは、明け方の月のように消えてしまいそうな表情だった。


途端に、心臓が不穏な高鳴りを増す。


どうして、そんなに苦しそうな顔をしてるの?


私には、その言葉が、まるで自分自身に言っているように聞こえるよ。



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