【完】クールな君に告白します
「あっ、あれは……っ、椎名くんが、その……とても悲しそうでしたし……!」
体育館から強引に月城を連れ去ったあと。
月城の細い肩に顔を埋めた直後、オレの背中に伝う月城の震えた指先が憂鬱を溶かしていった。
「抱き締めたというか、こう……手が勝手に、それはもう私の意思を無視して手が……っ、」
期待通り、大袈裟な反応をしてみせる。
お前は、自分自身が焦りだすと早口になって敬語が戻るってこと、気づいてんのか?
月城の横顔が真っ赤に染まる。
……ああ、やばいなオレ。
これじゃ、いじめてるみたいだろ。
例えるなら、愛想の振り撒き方が下手くそな、猫みたいだ。
しかめっ面して否定したり、頬を赤らめて言い訳を重ねたかと思えば、「椎名くん?」……と。
潤んだ瞳で恐る恐る見上げるから、降参せざるを得なくなる。