【完】クールな君に告白します



「さっきは試すようなこと言ってごめんね?だけどさ、月城は不気味なんて呼ばれるような子じゃないだろう?」


「……、」


「隼人も不気味って呼んでて、まさか月城のことを言ってるのかって驚いた。けど、アイツだけは名前で呼んでることに気づいたよ」


「アイツ………?」


「椎名だよ。さっきもはっきりと月城のこと呼んでたろ?」



言いながら私の前にそっと歩み寄る梶先輩は、もう一度、その和らいだ表情で問いかける。


椎名くんが、初めて私に図書室で声をかけてくれた日を思い出す。


ーーー“月城公花。お前、自分の名前忘れたのか?”


その言葉通り。

もう自分さえも自分の名前を忘れてしまう程、名前を呼ばれることもなかった暗い日々に、椎名くんは少しずつ少しずつ光を射してくれて。


ーーー私を名前で呼んでくれた。



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