【完】クールな君に告白します
前に、創立記念祭の話をしていた時と同じ表情を浮かべると、恋愛小説を受け取る手は躊躇いを見せ、キュッと唇を噛み締めた。
「正木さん………?」
「っ、……ごめんなさい。下に車を待たせていて。スケジュール通りに動かないと、母に叱られるから………」
正木さんが眺めていた窓の外を見下ろすと、そこには黒に染まったいかにも高級車と呼べる一台の車が停められていた。
……改めて、正木さんは名門校に通っていたというだけある、正真正銘のお嬢様なんだと知らされたようだった。
「じゃあ、わたし行くね?ごめんね。今度また、話せる時に」
「は、はい。いつでも構いません……!」
小さく頷いた正木さんは本を受け取ることなく、どこか不安げな笑みを見せると足早に廊下を去っていく。
その背中はすぐに見えなくなってしまった。