【完】クールな君に告白します
・王子様の憂鬱



あっという間に二月も半ばへと進んで、創立記念祭の準備も本格的に取り組み始めた今日は、バレンタインデー。


女の子の色めき立った声と視線は、たった一人のクール王子へと絶え間なく注がれていた。


当然、恋する乙女達の話題は、どんなチョコをいつ渡すか……で、お化け屋敷の中に貼るお札を作成する私の耳にも聞こえてしまう。



「フフッ……あたし、椎名くんのためにトリュフチョコを作ったの」


「プッ!トリュフチョコ?まるめるだけの時短レシピ?手抜きだよね、手抜き!」


「わたしなんて、東京の本店でマキシムザ・パリの限定チョコケーキを買ってきたんだから」


……と。

激しいバトルを繰り広げる女の子達に、当の本人ーーー椎名くんは、通路を作る小道具を無造作に置き、居心地の悪い教室を出ていってしまう。



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