【完】クールな君に告白します
* * *
煩わしい教室から逃げ場所を探すように図書室へと辿り着いたのは、無意識に足がここに向かったからだったと思う。
バレンタインのせいか、朝から下駄箱には女の群れが待ち構えていて、その煩わしさに憂鬱しか感じなくて。
「ねぇ、椎名くん?今年も、陽菜と一緒にナンバーワンの王子様とお姫様になろうね……?」
月城とのことがあってからほとぼりも冷めつつあったが、春風のしつこさには正直参った。
差し出すことをやめない春風のリボンが結ばれた紙袋を拒み続ければ、わけのわかんねぇ集団と春風が揉め始め、その隙に教室へ向かったのも朝の話だ。
それでも、放課後も煩わしさは付きまとう。
図書室で目を閉じればいつの間にかまどろみに落ちていたオレは。
「椎名……くん、やっぱり、風邪ひいちゃうよ?」
……と。
聞き慣れた声に反応する。
煩わしい女は嫌いだ。
でも、お前の声は、ちっとも不快じゃない。