【完】クールな君に告白します



生温い感触に手の甲を見れば、絵心のない似顔絵を描いていたら、からかってやろうと思った自分を酷く後悔した。



「………バカじゃねぇの、」



お前って、やっぱり変なヤツなんだよ。

不器用に、なぞるように描かれていたのは、甘ったるい色のハートで。



「違うよ……それは、椎名くんがいつも……優しいから。だから……っ、」



すぐ消せるとか、そんなこと言ったのは紛れもなくオレ自身だが。



「お前ふざけんなよ……」


「っ、」


「消すのに、時間かかるもん描くなよな。煩わしい……」


「え……、」



“優しいから”。

たった一言で、頭の片隅に刻まれた泥ついた記憶が軽くなる。


ほんと、どうすんだよこれ……。



「なに笑ってんだよ、バカ……」



そう言いつつも、しばらく挙動不審なお前がようやく見せたその表情に、もう怒る気もなくなったんだけど。



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