【完】クールな君に告白します
* * *
……改めて、椎名くんの手の甲に描いてしまったハートマークを見る度に、自分でも恥ずかしくなるから救いようがない。
けど、意外にもあっさり消されると思っていたハートはまだ残ったまま。
「……あ。椎名くん。聞いてもいい?」
「次はなんだよ?」
「私のこと、推薦したって先生から聞かされたんだけど……スピーチの代表者に。その……なんで、私を?」
限定イベントのスピーチ代表者なんて募れば誰もが名乗り出る程で、去年の記憶だと、三年の美人な先輩が務めていた。
なぜ、その大役を私に……?
「……別に。春風とか、わけのわかんねぇ集団とか、煩わしいだけだから」
「でも、私……ちゃんと書けるかな。それにスピーチなんてやったこと……」
「お前なら大丈夫だろ」
「え……?」
「蚊の鳴くような声じゃなきゃな?」
……と。
口角を上げて意地悪な発言をする……。
だけど、視線と視線が合った数秒後には、優しい眼差しに変わる椎名くんに私は自然と頷いた。