【完】クールな君に告白します



え……?


ーーー“楓”……と。


私には、確かに“楓”と呼んだのがわかった。

咄嗟に振り返って椎名くんを見た私の胸は早鐘を打ちつける。



「………紅葉、」



色を無くした瞳はあの夜と同じで。

ただただ驚きでしかない椎名くんは、ぽつりと三条さんの名前を零した。


椎名くんのことを“楓”と呼ぶのは国崎くんだけで。


同様に、椎名くんが女の子の名前を口にすることは今まで絶対になかったと思う。


だから、それだけで、三条さんと椎名くんは特別の仲なんだってことを理解出来てしまう。


二人の交わる視線を追えば、すぐに違う場所へと向けられて、三条さんは返却カウンターのそばにある本棚を見つめた。



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