【完】クールな君に告白します
少し離れた場所で白熱している先輩達は私の存在には気づいていない。
だけど、そんな私の視線を感じた春風さんがこっちへ振り向いた。
「……っ、」
目が合った春風さんは酷く困惑に満ちた顔をして、すぐに先輩達へと向き直る。
「陽菜は、諦めない……エントリーを辞退するつもりもないから……っ、」
「生意気なことばっか言……、」
「だって陽菜は……陽菜は、椎名くんのことが好きだから……!だから、このエントリーは、譲らない……!」
真剣な声は私にまで届いた。
春風さん……。
丁寧に巻いたであろう髪が微かに揺れる。
真っ直ぐに、偽ることなく自分の想いを口にした春風さんを見つめていたら、一瞬、過去の自分の姿がそこにあるように見えた。