【完】クールな君に告白します



「わたし……やっぱり、ずっと描けなかったから、何か参考になる画集があればと思って……あの日、思いきって図書室に行ってみたんだ……」


「そうだったんですね……」


「たけどまさか、楓に会うなんて……っ、行くんじゃなかったね……」


……と。

窓の外を見つめた三条さんは独り言のように声を落として、少し悲しげに笑ってみせる。


どうして、椎名くんも三条さんも、冬休みの夜に会った三条さんのお父さんも。


まるで、会うことさえ許されないような言い方をするんだろう。



「会ってはいけないんですか………」



思わず口を衝いて出た私の声に、三条さんは、叱られた子供みたいな顔をしていた。



「……わたしには、もう、会う資格がない」



泣きそうな声を漏らすと、テーブルに乗せたその繊細な手を、強く握った。



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