【完】クールな君に告白します
「………いきなり、こんな話してごめんね……?やっぱり創立記念祭の絵は描けそうにない……わたし、職員室に寄らなきゃ行けないから……」
窓から離れた三条さんは椅子に引っ掛けたコートを手に取ると、わたしの横を通り過ぎる。
幼さの残る瞳が悲しみに濡れたように揺れる。
「……ほっ、ほんとに、忘れてしまったままでいいんですか?」
ーーー“もう、忘れてる。だから、黙って今まで通りにしろよ”
本当に、諦めてしまったままで、いいわけない。
だって、椎名くんも三条さんもお互いに名前を口にしていたから。
二人は、お互いを確かにーーー、
「楓は………わたしのこと忘れたままでいい。もう、今さら何も言えない……っ、」
美術室を出ていく三条さんに、私は何も言えずに立ち尽くしていた。