【完】クールな君に告白します
「紅葉……帰るぞ。こんな腐ったヤツにかける言葉がもったいない……」
情けないことに男二人の力にはどうやったって勝てないオレは、一刻も早く立ち去るために紅葉の手を掴もうとした。
「女のクセに……っ、」
屈辱を受けたことで顔を紅潮させたがたいのいい男は、地を這うような低い声を漏らした。
戸惑いながら頷いた紅葉は、無惨にも転がったままのキャンバスを拾おうとした。
その、紅葉の手を……、
「ーーー………っ!!」
目を血走らせた男は、その小さな手を踏み潰した。
「っ、紅葉……………!?」
大地を彩る紅葉(もみじ)を踏みつけるように、泣き叫ぶ声も届いていない男は、獣のように大声で喚く。
「なっ、何をしてるんだ………!?」
悲鳴を聞きつけて飛んできた老人の声に、焦り出し逃げて行く男達は、いい様だとオレを笑った。
「………くれ、は?」
声にならない痛みに意識を失った紅葉の血の滲む小さな手と、折れ曲がったキャンバスが、世界の終わりのように視界に映った。
ーーー大切にしたかった君の瞳さえも、オレは守れなかった。