【完】クールな君に告白します



行き詰まっていたから、と話してくれた三条さんの罰が悪そうな表情は叱られた子供のようで。


三条さんは後ろにある大きなキャンバスを隠すように私に身体を向けている。



「………でも描けるようになったんですよね。それは、嬉しいことだと思います……」


「……、」


「でも……、」



でも、いつ描けるようになったのだろうか。

怪我を負ったことがきっかけで描けなくなってしまったはず……と、椎名くんの話を思い出す。



先日訪れた時も絵の具の匂いがした。

木製のテーブルに並べられた絵の具。

そして、色のついた筆……。


すぐにひっくり返されてしまったキャンバスには何かの絵が描いてあったような気がした。


だけど、あの時は描けなくて困ってたって三条さんは言っていて、画集を受け取った……。


私はどうしてもそれが気になっていた。



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