【完】クールな君に告白します
「……本当は、描けないなんて嘘なの」
……と。
私が複雑に抱いた疑問を感じ取ったように三条さんは答えた。
“嘘”……。
「中学の時にわたし……怪我をしたの。楓と一緒に帰った時に不良に文句をつけられて……」
「き、聞きました……椎名くんから、三条さんとのことを」
本当は知らないままにするべきだったのもと迷ったけれど、“嘘”と発した声に、とても黙っているなんて出来なかった。
「そっか………」
三条さんは思い詰めたように絵の具のついた筆を見つめた。
「わたしのお父さんは楓を責めてたよ。すごく怒ってた。コンクールが近かったから、怪我で応募する絵が描けなくて……諦めるしかなかったから」
「……、」
「だけどね、わたし……本当は、どこかでホッとしてたの」
「っ、ホッとしてた………?」