【完】クールな君に告白します



「……本当は、描けないなんて嘘なの」


……と。

私が複雑に抱いた疑問を感じ取ったように三条さんは答えた。


“嘘”……。



「中学の時にわたし……怪我をしたの。楓と一緒に帰った時に不良に文句をつけられて……」


「き、聞きました……椎名くんから、三条さんとのことを」



本当は知らないままにするべきだったのもと迷ったけれど、“嘘”と発した声に、とても黙っているなんて出来なかった。



「そっか………」



三条さんは思い詰めたように絵の具のついた筆を見つめた。



「わたしのお父さんは楓を責めてたよ。すごく怒ってた。コンクールが近かったから、怪我で応募する絵が描けなくて……諦めるしかなかったから」


「……、」


「だけどね、わたし……本当は、どこかでホッとしてたの」


「っ、ホッとしてた………?」



< 491 / 563 >

この作品をシェア

pagetop