【完】クールな君に告白します
ぽつり、と。
零れおちた声が後悔に濡れていた。
「………自分を守りたいのは、みんな同じです。傷つくのが、怖いから嘘をつく……、」
私が呟けば、筆を握り締めた三条さんがピクリと手を動かした。
自分を守るためについた嘘は誰かを傷つける。
……私自身がそうだったように。
「でも、三条さんは言ってたじゃないですか。椎名くんのことを、忘れてないって……もう今まで通りにしたくないって……」
はっきり私がそう言えば、三条さんの後悔に濡れた瞳と目が合った。
「……うん。楓のことを忘れるなんて、自分が楽になるための嘘で。描けないふりも、もう終わりにしようと思った。自分を守るための嘘をついたままだと、未来さえも描(えが)けないから……」
私はゆっくりと頷いた。
もう一度、自分自身を見つめれば、きっと何かに気づくことが出来るはず。
そうやって、気づくことに遅いということはないと私は思う。