【完】クールな君に告白します
「……ありがとう。えっ。でも、どうして椎名くんが……?」
「正木だよ。きっと、それ忘れて今頃焦ってるだろうからお前に渡してくれって……ったく。オレは、アイツのパシりかよ」
私の前方にいるであろう椎名くんが気だるそうに舌を打ったのを感じた。
だけど、椎名くんの姿はやっぱり見えないまま。
「ありがとう……」
もう一度、そう小さく声を零せば私の椎名くんに対する思いまで溢れてきてしまいそうになる。
こうやって、文句を言いながらも忘れた私が悪いのにノートを届けにきてくれた。
そして、ゆっくりと離れていく椎名くんの手。
「……待って、椎名くん」
「……っ、」
咄嗟に手を伸ばした私は暗闇の中にいるであろう椎名くんの、恐らく制服のワイシャツの裾を掴んだ。
お願い、椎名くん……。
まだ、行かないで……と。
心で呟けば、なぜだか、鼻の奥が熱くなった。