【完】クールな君に告白します
・陰が君を隠すから
* * *
ーーー“ありがとうございます……”
懸命に伝えるその女の声が震えている。
今朝同様に、下を向くなといってもこの通り何一つ変化はなくて。
さらに、分厚い前髪はいつでもこの“月城”という女の表情を隠してるように思う。
だから、どんな顔をしているのか検討もつかないオレは、まさか泣いたりしてないだろうな、とその前髪に咄嗟に手を伸ばしていた。
癖の強い黒い髪を掻き分ければーーー。
一瞬、驚きに包まれた月城の、捨てられた猫のように怯えた瞳と目が合った。
けど、そんな月城よりも驚いたのは、きっとオレの方だったんじゃないか……。