【完】クールな君に告白します



“手が届いたら”ーーー。


その言葉に痛みを覚えたのは、月城の気持ちが、オレにも同じように感じたから。


ここから見える場所があるから………。


同時、そう言って笑みを零した月城に、オレはまた驚くしかなかった。



……なんだよ、いつも蚊の鳴くような声のクセに。



突風に掻き消されないように負けじと発した月城の。


表情を隠すためにあるような癖の強い髪も、目元に重くのしかかった分厚い前髪も、冬の風に強く靡(なび)いて。


ほんの一瞬見せた笑みーーー。


沈みかけた夕陽に照らされたその表情は。


“不気味だから、不気味ちゃんなんだよ……”


そんな陰を背負った言葉が不釣り合いだと思わせるかのような、月城という女の初めて見た柔らかい微笑みだった。



< 99 / 563 >

この作品をシェア

pagetop