【完】クールな君に告白します
“手が届いたら”ーーー。
その言葉に痛みを覚えたのは、月城の気持ちが、オレにも同じように感じたから。
ここから見える場所があるから………。
同時、そう言って笑みを零した月城に、オレはまた驚くしかなかった。
……なんだよ、いつも蚊の鳴くような声のクセに。
突風に掻き消されないように負けじと発した月城の。
表情を隠すためにあるような癖の強い髪も、目元に重くのしかかった分厚い前髪も、冬の風に強く靡(なび)いて。
ほんの一瞬見せた笑みーーー。
沈みかけた夕陽に照らされたその表情は。
“不気味だから、不気味ちゃんなんだよ……”
そんな陰を背負った言葉が不釣り合いだと思わせるかのような、月城という女の初めて見た柔らかい微笑みだった。