キミ専属
 仕事が終わり、家に帰ってきた私はケータイを開けて『またか』とため息をついた。
私のケータイにはまた大量の電話とメールの通知が来ている。
そのうちの1件は由真さんからのメールで、その他は全部翔太さんからの電話とメール。
こんなのが毎日続いたら、由真さんからの連絡を見落としかねない。
もしそんなことになったら、私の仕事にも由真さんの仕事にも影響が出る可能性だってあるんだから、そろそろいい加減にしてほしい。
それに、もう既に社長にも迷惑がかかってるんだし…。
 私は由真さんからのメールの本文を開く。
本文にはこう書いてあった。
〈今日はお疲れ様でした。
明日の収録もよろしくお願いします(*ˊᵕˋ*)〉
そう、明日はバラエティ番組の収録がある。
『新人タレント大集合!』という番組のゲストとして由真さんが出演するのだ。
雑誌の撮影現場しか行ったことがない私にとって、テレビの収録現場は未知の世界でしかない。
だけど、由真さんと一緒なら何故か大丈夫な気がする。
私は由真さんに〈お疲れ様でした。こちらこそよろしくお願いします。〉というメールを送ると、ためらいながらも翔太さんからのメールを1つ1つ見ていった。
〈朝はごめんね。〉
〈急に抱きついたりなんかして、ほんとごめん。反省してる。〉
〈許して。〉……
…なんか、翔太さんからのメールを見てると今朝のこと思い出しちゃうんだけど…。
私は翔太さんからのメールを見ながら顔を赤くする。
翔太さんには散々嫌なことをされてるはずなのに、こんな時まで“私やっぱり翔太さんが好き”と実感させられる。
…そんな自分が嫌だ。
私はわざと冷たくするように、こう返信した。
〈こういうメールとか電話、迷惑です。もうやめてください。〉

…返事は来なかった。
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