キミ専属
 ━━━次の日。

「「おはようございます!本日は宜しくお願い致します!」」

収録スタジオに着いた私と由真さんは、番組関係者の方々に挨拶回りをしていた。
由真さんをリードしながらテキパキと挨拶回りをしていく私を見て、由真さんが感心したように言った。
「梅さん、こういうことに慣れているんですね。さすがです」
それを聞いた私は内心ビックリしつつ、こう言った。
「そんなことないですよ。なんせ挨拶回りは2回目の経験ですから」
すると、由真さんは私に尊敬の眼差しを向けてこう言った。
「2回目の経験でそんなにテキパキとこなせるなんてすごいです…!!」
私は少し照れながら言った。
「ありがとうございます。…初めて経験した時に、以前私が担当していたタレントさんがリードしてくれたんです。今思えばそのおかげですね」
言いながら、私は懐かしい気持ちになっていた。
翔太さんと初めて挨拶回りをした時、私はまだ何にも知らなかったんだよね。
あの頃は楽しかったなぁ。
思わずポーッとしていると、由真さんがクスッと笑った。
ハッとして由真さんを見ると、由真さんは笑顔のままこう言った。
「以前担当したタレントさんのことを話している時の梅さん、とっても楽しそうで見ていて和みます」
それを聞いた私は、初めて自分が楽しそうに話していたことに気づいた。
なんだか照れくさくて、少し恥ずかしい気分だ。
 その時だった。
「○○が来てないのか!?!?今日の収録できねーじゃねーか!!!!」
突然スタジオ中に響き渡る怒号。
私と由真さんはそれにビクッとした。
名前は聞き取れなかったけど、どうやら今日の収録に来るべき人が来ていないようだ。
━━━━━「誰か小林 翔太を呼べ!!!!」
続いて聞こえてきた怒号に私は自分の耳を疑った。
え…?なんで翔太さん??
今日の収録って『新人タレント大集合!』だよね???
でも、考えている暇はない。
翔太さんを呼ばないと、収録ができなくなっちゃう…!!
私は由真さんに「ちょっと待っててください」と一言告げると、スタジオの外に飛び出し、翔太さんに電話をかけた。
しかし、翔太さんはなかなか電話に出ない。
5コールほどした後、「ただいま電話に出ることができません…」と留守電になってしまった。
だけど、私はめげずに電話をかけ続けた。
翔太さんが電話に出てくれることを祈りながら。
…すると。
…カチャッ
ケータイ越しに電話に出る音が聞こえて、私は思わず声を上げた。
「翔太さんっ…!梅です!!収録の時間とっくに過ぎてますよっ。早く来てください!!」
すると、翔太さんはクスッと笑い声を零し、こう言った。
「梅ちゃんの嘘つき」
「は…!?」
「電話とかメール迷惑だって言ったくせに自分からしてるじゃん」
「あ…!」
私は昨日自分がメールで送ったことを思い出し、咄嗟に訂正した。
「訂正します!電話もメールもしていいですからっ。早く来てください!!」
翔太さんはクスクス笑ってこう言った。
「なんか、梅ちゃんが俺のマネージャーに戻ったみたいだね」
「そんなことどうでもいいから早く来てください」
「なんで?どうでもよくないよ?」
「いいから早く来てくださいっ!!みんな翔太さんを待ってるんですよ!?」
急ぐ私と、急ぐつもりがまるでない翔太さん。
このまま言い争っていても無駄だと思った私は、翔太さんにこう問いかけた。
「今どこにいるんですか?」
「んっとねー…こもれび墓地」
……墓地??
私はなぜ翔太さんが墓地にいるのか疑問に思ったが、とりあえずその墓地に急いで向かうことにした。
これから衝撃の真実を知るとは知らずに。
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