LOVE物語
ーside尊ー

遥香を学校に見送ってから1時間経っていた。

遥香、大丈夫かな。

俺は、ずっとこんな感じで遥香のことで頭がいっぱいになっている。

「…こと?」

体育はやるなって言ったけど、遥香は体を動かすことが好きだから、きっと無理してでもやりそうだな。

いや。そんなことされたらどうする?

急に心配になってきた。

「おい!尊!」

「あ、なんだ?」

俺を我に戻したのは、昔からの腐れ縁で遥香のいた小児科で働いていた宮崎廉。

「さっきからぼーっとして、具合でもわるいのかよ?」

「そんなんじゃないよ。」

「ふーん。じゃあ、好きな子のことを考えてたとか?」

「はっ!?」

俺は、大きい声を出していた。

「図星か。」

「そんなんじゃねーよ。」

「そうかー?でも、珍しいな。お前がそんなに女のことを考えてるなんて。昔から、モテる割には全然女子に興味なんてなかったよな?」

「廉、俺もう回診の時間だから行くな?外来の患者ももうすぐ来るし。」

「おう!じゃあ、また昼にな!」

「うん。」

そうだよ。
今は、医者として仕事をしなきゃ。

遥香のことは心配だけど、遥香には友達もいるし大丈夫だろう。

心配しすぎても、遥香にうざがられるだけだよな。
でも、うざがられようが心配は絶対消えない。

俺は1人1人回診を始めて、回診が終わった頃はお昼になっていた。

携帯を開くと1件の着信。

え?

驚いてその着信先を見ると、遥香じゃないことに安心した。

安心したけど、少しだけ寂しさを覚えた。

いや、元気にやってればいいんだけど。

なんか、昨日までここに入院していた遥香がいないと少しだけ寂しいな。

何考えてるんだ、俺。

もちろん、入院なんてしないで元気でいてほしい。

でも、やっぱり心配だからメッセージだけ入れておくか。

『遥香、大丈夫か?無理はするなよ。』

これでいいか。

すると、すぐに返信がきた。

『さっき、貧血で号令のあとに倒れちゃったから保健室で寝てます。でも、大丈夫だから。』

大丈夫じゃないだろ。

遥香の血圧、どうにか上がってくれないかな。

『お昼休みに、そっちに向かう。』

3時までは診察はない。
それまでに様子を見に行こう。

それから、遥香からメッセージが来ることは無かった。

大丈夫かよ。

それから、昼休みになって俺は遥香の学校に向かっていた。

頼む、発作は出ないでくれ。

せっかく落ち着いてきたのにまた入院なんてさせたくない。

遥香の辛い思いはあんまり見たくない。

見てる俺も心が苦しくなる。

「遥香!」

俺は、校長先生を通して遥香のいる保健室に向かった。

「あ、遥香ちゃんなら落ち着いたから教室に戻したけど。」

「落ち着いたのか?」

「血圧測ったら、上が94だったから。倒れた時は79まで下がってたのよ。」

「そんなにか…。」

「呼んでこようか?」

「いや、大丈夫。また何かあったら連絡して。」

「うん。」

「ありがとうな。」

「いいえ。」

血圧が80をきったなんて…。
今日の帰りに病院に寄って薬物療法をするか。

病院に戻り、お昼を食べて医局で仕事をしていると、

「佐々木先生。」

「あ!山城先生!」

「どうです?遥香ちゃんは。」

「心は徐々にですが開いてくれてます。でも…」

「でも?」

「低血圧だから、立ちくらみとかひどくて。」

「昔から、血圧は上がったことないのよ。100を越したことなんてないの。90もあればいい方よ。」

「そうですよね。」

「遥香ちゃんに、昔何があったかとか詳しく聞いた?」

「いや。それが何も。」

「そっか。」

「時間をかけて、過去に負った心の傷を俺が治していきます。難しいことなのは分かってますが、遥香に笑顔を取り戻してもらいたいんです。」

「佐々木先生。遥香ちゃんによろしくお伝え下さい。」

「はい。」

そう言うと、山城先生は小児科へ戻って行った。

それから、昼休みの時間を使って患者さんのカルテを整理した。

早く終わらせて、早く遥香の元へ向かいたい。

午後の診察に向けて俺は準備をした。
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