LOVE物語
ーside遥香ー

貧血は起きたけど、喘息の発作は出てないしきっと大丈夫。

そう思っていた。

そういえば、次は体育。

でも、私はできないから特別室で今まで休んでいた分の授業を体育を使って少しずつ行われた。

それから、学校は終わり部室へと向かう。

私は、週3で活動をしている軽音部に入部している。

今年は、文化祭の年だから曲を決めたり忙しい。

部長の千尋を中心に、何故か副部になった私も話し合いを進める。

やりたい曲が多すぎて中々まとまらない。

「やっぱり、盛り上がるのがいいと思うんだよね。」

そう言うのは、キーボード担当の『愛梨』

「うん!盛り上がるやつの方がいいと思う。文化祭だし、思いっきりやりたい!」

ベースの菜々も愛梨に賛成をした。

「じゃあ、盛り上がる曲を中心に曲をまとめていこう。」

さすが千尋は、みんなをまとめる力がある。

「衣装とかはどうするの?」
私の問いかけに、

「衣装はー、作ってもらわない?」

「誰に?」

「裁縫のサークルの人に。」

「いいと思うけど、やってくれるかな?」

「私の席の隣の子、裁縫サークル入ってる人いるから、聞いてみようか?」

「うん!愛梨、お願い!!」

「おっけー!」

曲を決めてから1時間練習して部活終了の時間。

気づけば18時。

先生、もう終わったかな?

そう思いながら、音楽室を出て先生に電話をしてみる。

「遥香?」
ずっと聞きたかった優しい声。

「先生、部活終わりました。」

「分かった。今から迎えに行くから保健室で待っててくれる?梓には伝えておくから。」

「分かりました。」

私は、ギターを持ち保健室に向かった。

「みんな、じゃあね!」

「「「じゃあね!!」」」

保健室に向かう途中、ずっと我慢していた発作がでてきた

ゲホゲホゲホゲホッ…ハァハァ…ゲホゲホゲホゲホゲホゲホッ

やばい、吸入しなきゃ。

その場で私は座り込みポケットにあった吸入器を吸おうとした。

でも、手が震えてうまく吸えない。

ゲホゲホゲホゲホッ…

先生に電話しなきゃ。

苦しくて、それどころじゃない。
ゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホゲホッ…ハァハァ…ゲホゲホゲホゲホ

「遥香!?」

「ひろ…と?」

「大丈夫だからな!」

そう言うと、大翔は私の背中をさすり吸入器を吸わせてくれた。

ようやく発作は落ち着き、大翔は私を姫抱きにして保健室に連れて行ってくれた。

「梓先生!遥香のことよろしくお願いします。」

「どうしたの!?」

「さっきそこで、発作を起こして…」

「分かった。大翔君、ありがとう。遅くなっちゃうからもう帰りなさい。あとは、先生が診るから。」

「はい。」

「遥香ちゃん。苦しかったね。」

先生は、優しく背中を撫でてくれた。

「急に、発作出ちゃったのかな?」

「放課後…すこしだけ苦しくて。でも、発作は出ないから大丈夫かと思って…」

「…尊先生には、発作が起きたこと伝えた?」

横に首を振る。

「今、電話して伝えてくる。」

「……やめて。」

「え?」

「お願いします!電話はしないでください。」

「でも!」

「帰ったら、自分でちゃんと伝えますから。」

「…分かったわ。」

先生に、連絡しろとは言われたものの、学校にも行けなくなっちゃうし先生にも迷惑をかけるから連絡したくなかった。

お昼の時も、貧血のことあったし…。

それからしばらくして、尊先生が来た。

「遥香ー、迎えきたよー。」

「先生。」

「遥香…発作出ただろ?」

「え?」

速攻バレた!
私は、急いで言い訳を始める。

「でてない!でてないよ!!」

「呼吸が浅いよ?」

「ほら、音楽室から下に降りてきたから。」

「嘘はつくな。」

「ごめんなさい…」

「辛い思いするのは遥香だよ?だから、体調悪くなったら言って?」

「だって、先生に迷惑かけっぱなし…だし…」

「遥香…。悪かった。ありがとう、気にしてくれて。でもな?俺は遥香のことを、迷惑とか思ったことはない。むしろ、俺は遥香の支えになりたいんだ。」

「先生…」

「だから、もう何も隠さないで?」

先生の手は暖かくて、背中を撫でる手に安心した。

「あとは、家でね。」

「あぁ、悪い梓。ありがとうな。」

「いいえ。遥香ちゃん。ばか兄貴だけど遥香ちゃんのこと幸せにしてくれるよ。」

「梓先生。」

「お大事にね。」

「はい。ありがとうございます。」

「じゃあ、帰るか。」
先生はそう言うと、私のリュックを持って私を姫抱きにして車に乗せてくれた。

「発作で疲れた?」

うとうとしている私に気づいて先生が私に毛布をかけてくれた。

「ありがとう。」

「着いたら起こすな。」
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