LOVE物語
ーside尊ー
ちょうどお昼休憩になった頃1本の電話があった。
梓からで俺は一気に不安になった。
遥香に何かあったのかな?
急いで電話にでる。
「梓!?遥香に何かあったのか?」
「あ、ごめん。違うの。」
「よかった。それでどうかしたか?」
「あのさ、遥香ちゃんのことちゃんと見ててあげてね。」
「あぁ。それはもちろんだよ。でも、急にどうして?」
「遥香ちゃんが、母親にされたことが遥香の喘息が原因だったみたいなの。そのことに関して遥香ちゃんから詳しく聞いてない?」
「母親のことに関してはあまり聞けてないんだ。山城先生から受け継ぎの時も、ただ母親とは疎遠でひどいことをされた。っていうことしか聞いてなくて。」
「遥香ちゃん、そのことで今自分を思いつめちゃってる。そこら辺のところ、ちゃんと聞いてあげなよ?過去のことは、触れない方がいいのかもしれないけど、遥香ちゃんの不安は尊と遥香ちゃん自身が向き合わないと何の解決にもならないと思う。」
「そうだよな…。梓、ありがとうな。今日の夜遥香と話してみるよ。」
遥香が、過去に負った心の傷は思ってる以上に深くて大きい。
遥香は俺に心配かけないように色々我慢しちゃうんだよな。
それは、一緒に暮らしてて分かったこと。
だからこそ、注意深く見守らないといけない。
遥香の抱えているものを俺が半分背負うのにな。
無理しないだって言っても無理をするのはいつものこと。
俺に負担がかかると思って、体調悪いことも何があったのかも隠してしまう。
遥香自身が負ったものこそ、負担が大きすぎるんじゃないのか?
頑なに閉ざしていた心を、少しずつ俺に開いて来てくれてるんだもんな。
それは、本当に嬉しいこと。
だからこそ、尚更向き合っていかなきゃいけない。
遥香と、遥香自身も。
過去の問題は、遥香自身向き合わせないといけない。
俺は、そのサポートくらいしかできないけど。
遥香のためにできることをしてあげたい。
今すぐじゃなくてもいい。
ゆっくり時間をかけていこう。
遥香が向き合えるまでもその後も、ずっと一緒にいるつもりだからな。
俺は、そのまま仕事を続けた。
「尊先生、急患です。」
「分かった。」
急いで救急車を待った。
それからしばらくすると、救急隊員からの情報が入った。
その情報に俺は頭が真っ白になった。
「白石遥香さん。16歳、喘息の発作と脱水症状で倒れました。佐々木総合病院の患者さんで間違えありませんか?」
「…」
俺は、言葉を失っていた。
脱水症状?
「はい。すぐに運んでください。」
俺の変わりに近藤さんが答えた。
「尊先生、しっかりして下さい。今、辛いのは遥香ちゃんですよ!」
「分かってる。」
そうだよ。しっかりしろ。
遥香を救うことを優先だ。
それからしばらくすると遥香が運ばれてきた。
意識を失っていた。
ずっと発作が収まらなかったのか、顔は真っ青になっていた。
一緒に運ばれてきた梓に看護師が詳しく話を聞いていた。
遥香の治療に専念し、やっと落ち着きを戻してから病室へ運んだ。
俺は、遥香の手を握り手をつないでいた。
何があったんだ。
吸入が間に合わなかったのかな。
コンコン
入ってきたのは近藤さんだった。
「尊先生、遥香ちゃん大丈夫ですか?」
「まだ、目を覚まさなくて。」
「そうですか…。」
「尊!」
「梓、遥香いきなりこうなったのか?」
「それが、遥香ちゃんの幼なじみ千尋ちゃんから聞いたんだけど、遥香ちゃんの席が今ストーブの近くみたいで。それで、授業中に倒れたみたい。」
「授業中?」
「座ったまま、意識を失ったみたいだよ。それで、異変に気づいた大翔君がとっさに支えてくれて、頭を打たずにはすんだけど…。担任の先生は、遥香ちゃんが、そんなことで発作がでるなんて思わなかったみたいで。」
「そうだったのか…。」
冬はただでさえ、乾燥する。
ストーブの目の前の席となると喉が乾燥して発作と脱水症状に繋がったんだな。
「尊先生、もう1ついいですか?」
突然口を開いた近藤さん。
「あぁ。」
「ここの産婦人科に遥香ちゃんのお母さんが通院しているみたいです。」
「え?」
産婦人科?
まさか…
「まさか…」
「山城先生から、話を伺ったんです。遥香ちゃんのお母さんと遥香ちゃんのお母さんより10歳も若い男性と、通っているんです。妊娠しているみたいで。」
「そのこと、遥香は!?」
「知りません。言えませんよ。
ですが、同じ病院だから、出会う可能性も0じゃありませんよ。」
呼吸器内科は産婦人科と近い。
小児科、産婦人科と一緒の棟だし会う確率も高い。
「遥香ちゃん…。もし、お母さんと会ってここの産婦人科通ってるなんて聞いたら、何を起こすか分かりませんよ。」
「その人の担当の医師は?」
「それが…。遥香ちゃんのおばあちゃんです。」
「え?」
俺は耳を疑った。
「白石瞳」
その先生とは普通に話す。
まさか、遥香とつながっているとは。
「遥香ちゃんのおばあちゃんは、1年前にこの産婦人科に来たんです。他にも医師はいますけど遥香ちゃんのお母さんを担当しているのはおばあちゃんみたいですよ。」
「白石瞳先生って、遥香のおばあちゃんだったのか…。」
「幸い、遥香ちゃんはおばあちゃんの顔を知らないみたいで。だけど、遥香ちゃんのおばあちゃんはちゃんと遥香ちゃんの顔を知ってます。喘息のことは知りませんけど。」
「大丈夫。俺が、遥香を守るから。出会わせないように、看護師同士でも気をつけてくれ。俺も診察時間の調整をするから。」
遥香が動揺して、喘息がこれ以上悪化したらどうするんだよ。
何でここに通院してるんだ。
遥香は、小さい時からここの病院に通っていたはず。
それを知っていてわざとなのか?
ここに来なければいいけど。
看護師達に話しておくか。
お見舞いに来ても絶対会わせないように。
俺は、遥香の様子を見ていた。
時々、苦しそうな表情を見せるのが痛々しくて見てられない。
これ以上、遥香に負担はかけられない。
「ん…」
「遥香?起きたか?」
「先生、私…何で。」
「覚えてない?授業中倒れて運ばれてきた。」
「…先生、これ外して…」
遥香は酸素マスクに手をやる。
苦しいだろうけど、今外すと呼吸困難になる。
「ごめんな。まだ、外せられないんだ。苦しいと思うけどもう少しだけ頑張ろうな。」
遥香の頭を撫でると遥香は目を細めた。
「尊…仕事戻って?」
「何言ってるんだよ。」
「でも…まだ診察終わってないでしょ?」
「あのな…俺のことはいいから。遥香、俺は遥香のそばにいたいんだ。それに、診察なら他の先生に頼んだ。だから、遥香が気にすることはないよ。」
「ありがとう。」
「なぁ、席替えでもしたのか?」
「うん…。昨日の放課後に。」
「なんで言わなかったんだ?」
「…なんで言わないといけないの?」
「なんでって…。」
「ごめん…。」
「謝るな。遥香は悪くないから。先生に遥香の席を替えてもらうように頼んだから。」
「ありがとう。」
「はぁ…。本当によかった。また1週間眠り続けたらどうしようかと思ったよ。」
「そんなに眠らないよ。でも…心配してくれてありがとう。」
「遥香。」
こういう時、いつも『ごめんね。』しか言わないから『ありがとう』の言葉が嬉しい。
遥香が今、いろんな機械に繋がれていることを忘れ、医師であるということも忘れ遥香を抱きしめていた。
「ちょっと…。」
「遥香…ありがとう。」
「え?」
「俺に、幸せをくれて。」
「それは…私の方だよ。」
やっぱり、遥香の温もりは落ち着く。
この温もりをなくしたくない。
「尊、喉痛い…」
「あ、ストーブで喉を痛めたのかもな。酸素マスク外れたら喉見るから。」
「うん。」
再び、遥香をベッドに寝かせた。
それから、眠りに着いた遥香の様子を見ながら酸素マスクを外したり点滴を替えたりした。
ちょうどお昼休憩になった頃1本の電話があった。
梓からで俺は一気に不安になった。
遥香に何かあったのかな?
急いで電話にでる。
「梓!?遥香に何かあったのか?」
「あ、ごめん。違うの。」
「よかった。それでどうかしたか?」
「あのさ、遥香ちゃんのことちゃんと見ててあげてね。」
「あぁ。それはもちろんだよ。でも、急にどうして?」
「遥香ちゃんが、母親にされたことが遥香の喘息が原因だったみたいなの。そのことに関して遥香ちゃんから詳しく聞いてない?」
「母親のことに関してはあまり聞けてないんだ。山城先生から受け継ぎの時も、ただ母親とは疎遠でひどいことをされた。っていうことしか聞いてなくて。」
「遥香ちゃん、そのことで今自分を思いつめちゃってる。そこら辺のところ、ちゃんと聞いてあげなよ?過去のことは、触れない方がいいのかもしれないけど、遥香ちゃんの不安は尊と遥香ちゃん自身が向き合わないと何の解決にもならないと思う。」
「そうだよな…。梓、ありがとうな。今日の夜遥香と話してみるよ。」
遥香が、過去に負った心の傷は思ってる以上に深くて大きい。
遥香は俺に心配かけないように色々我慢しちゃうんだよな。
それは、一緒に暮らしてて分かったこと。
だからこそ、注意深く見守らないといけない。
遥香の抱えているものを俺が半分背負うのにな。
無理しないだって言っても無理をするのはいつものこと。
俺に負担がかかると思って、体調悪いことも何があったのかも隠してしまう。
遥香自身が負ったものこそ、負担が大きすぎるんじゃないのか?
頑なに閉ざしていた心を、少しずつ俺に開いて来てくれてるんだもんな。
それは、本当に嬉しいこと。
だからこそ、尚更向き合っていかなきゃいけない。
遥香と、遥香自身も。
過去の問題は、遥香自身向き合わせないといけない。
俺は、そのサポートくらいしかできないけど。
遥香のためにできることをしてあげたい。
今すぐじゃなくてもいい。
ゆっくり時間をかけていこう。
遥香が向き合えるまでもその後も、ずっと一緒にいるつもりだからな。
俺は、そのまま仕事を続けた。
「尊先生、急患です。」
「分かった。」
急いで救急車を待った。
それからしばらくすると、救急隊員からの情報が入った。
その情報に俺は頭が真っ白になった。
「白石遥香さん。16歳、喘息の発作と脱水症状で倒れました。佐々木総合病院の患者さんで間違えありませんか?」
「…」
俺は、言葉を失っていた。
脱水症状?
「はい。すぐに運んでください。」
俺の変わりに近藤さんが答えた。
「尊先生、しっかりして下さい。今、辛いのは遥香ちゃんですよ!」
「分かってる。」
そうだよ。しっかりしろ。
遥香を救うことを優先だ。
それからしばらくすると遥香が運ばれてきた。
意識を失っていた。
ずっと発作が収まらなかったのか、顔は真っ青になっていた。
一緒に運ばれてきた梓に看護師が詳しく話を聞いていた。
遥香の治療に専念し、やっと落ち着きを戻してから病室へ運んだ。
俺は、遥香の手を握り手をつないでいた。
何があったんだ。
吸入が間に合わなかったのかな。
コンコン
入ってきたのは近藤さんだった。
「尊先生、遥香ちゃん大丈夫ですか?」
「まだ、目を覚まさなくて。」
「そうですか…。」
「尊!」
「梓、遥香いきなりこうなったのか?」
「それが、遥香ちゃんの幼なじみ千尋ちゃんから聞いたんだけど、遥香ちゃんの席が今ストーブの近くみたいで。それで、授業中に倒れたみたい。」
「授業中?」
「座ったまま、意識を失ったみたいだよ。それで、異変に気づいた大翔君がとっさに支えてくれて、頭を打たずにはすんだけど…。担任の先生は、遥香ちゃんが、そんなことで発作がでるなんて思わなかったみたいで。」
「そうだったのか…。」
冬はただでさえ、乾燥する。
ストーブの目の前の席となると喉が乾燥して発作と脱水症状に繋がったんだな。
「尊先生、もう1ついいですか?」
突然口を開いた近藤さん。
「あぁ。」
「ここの産婦人科に遥香ちゃんのお母さんが通院しているみたいです。」
「え?」
産婦人科?
まさか…
「まさか…」
「山城先生から、話を伺ったんです。遥香ちゃんのお母さんと遥香ちゃんのお母さんより10歳も若い男性と、通っているんです。妊娠しているみたいで。」
「そのこと、遥香は!?」
「知りません。言えませんよ。
ですが、同じ病院だから、出会う可能性も0じゃありませんよ。」
呼吸器内科は産婦人科と近い。
小児科、産婦人科と一緒の棟だし会う確率も高い。
「遥香ちゃん…。もし、お母さんと会ってここの産婦人科通ってるなんて聞いたら、何を起こすか分かりませんよ。」
「その人の担当の医師は?」
「それが…。遥香ちゃんのおばあちゃんです。」
「え?」
俺は耳を疑った。
「白石瞳」
その先生とは普通に話す。
まさか、遥香とつながっているとは。
「遥香ちゃんのおばあちゃんは、1年前にこの産婦人科に来たんです。他にも医師はいますけど遥香ちゃんのお母さんを担当しているのはおばあちゃんみたいですよ。」
「白石瞳先生って、遥香のおばあちゃんだったのか…。」
「幸い、遥香ちゃんはおばあちゃんの顔を知らないみたいで。だけど、遥香ちゃんのおばあちゃんはちゃんと遥香ちゃんの顔を知ってます。喘息のことは知りませんけど。」
「大丈夫。俺が、遥香を守るから。出会わせないように、看護師同士でも気をつけてくれ。俺も診察時間の調整をするから。」
遥香が動揺して、喘息がこれ以上悪化したらどうするんだよ。
何でここに通院してるんだ。
遥香は、小さい時からここの病院に通っていたはず。
それを知っていてわざとなのか?
ここに来なければいいけど。
看護師達に話しておくか。
お見舞いに来ても絶対会わせないように。
俺は、遥香の様子を見ていた。
時々、苦しそうな表情を見せるのが痛々しくて見てられない。
これ以上、遥香に負担はかけられない。
「ん…」
「遥香?起きたか?」
「先生、私…何で。」
「覚えてない?授業中倒れて運ばれてきた。」
「…先生、これ外して…」
遥香は酸素マスクに手をやる。
苦しいだろうけど、今外すと呼吸困難になる。
「ごめんな。まだ、外せられないんだ。苦しいと思うけどもう少しだけ頑張ろうな。」
遥香の頭を撫でると遥香は目を細めた。
「尊…仕事戻って?」
「何言ってるんだよ。」
「でも…まだ診察終わってないでしょ?」
「あのな…俺のことはいいから。遥香、俺は遥香のそばにいたいんだ。それに、診察なら他の先生に頼んだ。だから、遥香が気にすることはないよ。」
「ありがとう。」
「なぁ、席替えでもしたのか?」
「うん…。昨日の放課後に。」
「なんで言わなかったんだ?」
「…なんで言わないといけないの?」
「なんでって…。」
「ごめん…。」
「謝るな。遥香は悪くないから。先生に遥香の席を替えてもらうように頼んだから。」
「ありがとう。」
「はぁ…。本当によかった。また1週間眠り続けたらどうしようかと思ったよ。」
「そんなに眠らないよ。でも…心配してくれてありがとう。」
「遥香。」
こういう時、いつも『ごめんね。』しか言わないから『ありがとう』の言葉が嬉しい。
遥香が今、いろんな機械に繋がれていることを忘れ、医師であるということも忘れ遥香を抱きしめていた。
「ちょっと…。」
「遥香…ありがとう。」
「え?」
「俺に、幸せをくれて。」
「それは…私の方だよ。」
やっぱり、遥香の温もりは落ち着く。
この温もりをなくしたくない。
「尊、喉痛い…」
「あ、ストーブで喉を痛めたのかもな。酸素マスク外れたら喉見るから。」
「うん。」
再び、遥香をベッドに寝かせた。
それから、眠りに着いた遥香の様子を見ながら酸素マスクを外したり点滴を替えたりした。